一念発起して、金庫を買ってみることにした。といっても通販で1万円ほどの簡易的なものだけど。それでもお金に対する意識は変わったと思う。学生時代はアルバイトで自分の生活をまかなっていたのだが、給料日1週間を過ぎるとほとんど使いきってしまい、友達から借りたり貧相な食事でしのいだりとずいぶん無茶な使い方をしていた。そんなある日、大学の先輩と一緒に飲みに行くことになり、話題は将来の夢についてという少々青臭い話になった。その先輩は親の会社を継いで大きくすることが夢なんだそうだ。「お前の夢は何だ」と聞かれたが、照れ隠しでも何でもなく僕は本当に夢と呼べるものがなかったので、先輩をがっかりさせた。そして別れ際、先輩が言ったのだ。「夢がないならとりあえず金を貯めろ」と。
とりあえず僕がしたことは、一か月の生活予算を決めてそれ以内の金額で暮らすというものだった。少々厳しいかな、という設定にしたのだが、それで気づいたことは、人間は残高で暮らしていけるということだ。100万円使えると思ってする生活と、5万円使えると思ってする生活では、根本的に意識が違ってくる。そんな風な生活を1年も続けると、あっという間に僕の貯金は3ケタまで行ったのだった。
ところで通販で買った金庫、家のどこに置けばいいのだろうと悩んだ。今まであまり気にしたことがなかったけれど、風水的には金庫をどこに置けばいいのかと調べてみたところ、お金に関するものはすべて北の方角に置くといいそうだ。そして初耳だったのだけど、枕も北に向けて寝るといいそうだ。
そんなわけで、僕の寝室の枕は北を向いているし、枕元には金庫が置いてある。これから今の生活を続けて貯金を増やし、いつかできるかもしれない夢のために備えているところだ。